生徒自ら「サステナブルな旅」を考える
訪問前の事前学習
まず、今回の探究型フィールドワークにあたり、生徒たちは4月から4回にわたる事前学習を受けました。
フィールドワークのゴールは、オリジナルのツアーを生徒たちが作り上げること。そのためにはまずGREEN JOURNEYのコンセプトと概要について学び、自分たちがツアーを通して何を学びたいのか方向性を決めました。その結果、「環境への取組×地域づくり×地域の人々との交流」をテーマにすることが決まりました。そして、訪問地への理解を深めるために宇都宮市や栃木県立宇都宮白楊高等学校の皆さんからオンラインでお話を聞いたり、学校オリジナルのGREEN JOURNEY5つのポイントを設定したりしました。
現地を訪問し、体験する
環境にやさしい移動
ついに迎えた、出発当日。
東京駅から宇都宮駅までの移動は、新幹線を利用。高速バスなど他の移動手段と比較してCO₂排出量が少なく、環境に優しい乗りものです。また、宇都宮市内の移動については、100%再生可能エネルギーの電気モーターで駆動するLRT(次世代型路面電車システム)を利用しました。
環境に優しい移動手段を取り入れることで、私たちは普段当たり前にしている「移動」という行為の中にも、サステナビリティを意識するきっかけを見つけられます。
日光東照宮への訪問
まず、生徒たちは東照宮と観光案内所を訪れました。
東照宮では、江戸時代から続く悠久の歴史に触れ、まるで当時の世界にタイムスリップしたかのような感覚を覚えました。さらに、徳川家康がなぜこの地に自らの墓所を築いたのかを学び、その深い意味に心を動かされました。
この経験を通して強く感じたのは、海外から訪れる観光客が、日光東照宮という日本文化の象徴だけでなく、日光の美しい自然そのものにも心を奪われているということです。そうした姿に触れたことで、生徒たちも日本の自然や歴史の素晴らしさを改めて実感したようです。
しかし、午後の学習で日光市観光協会の方にお話を伺ったところ、観光客が日光を訪れることは地域にとって大きな喜びである一方で、インバウンド観光による物価の上昇や交通渋滞といった課題も生じていると教えていただきました。そのお話を聞いて、観光が地域にもたらす恩恵と同時に、解決すべき現実的な問題があるのだと考えさせられました。
今回の訪問は、観光客を受け入れることの意義と難しさの両方を知る貴重な機会となりました。観光地はただ人が集まればよいのではなく、これからは地域の人々の思いにも目を向けながら、持続可能な観光のあり方を考えていくことが大切だと、生徒たちも話していました。
宇都宮白楊高校での農業VR体験
2日目の朝には、LRTに乗って栃木県立宇都宮白楊高等学校へ。
白楊高校は、農業・工学・経済・服飾など幅広い専門分野を学べる総合選択制の専門高校で、実習や地域連携を通じて実践的な力を育む学校です。
白楊高校の皆さんは聡明で、親切で、尚且つ周りを巻き込んでいけるようなカリスマ性があり、広尾学園小石川中学校の生徒たちもとても感銘を受けていました。
農業科では実際に学校で育てている梨の収穫体験や品質チェックに加えて、VRでの梨栽培という最新技術を体験。農業とITの融合の最先端の技術に生徒たちも興味津々でした。また、商業科の方々からはLRTについてのプレゼンを行っていただき、サステナブルな移動についての知見を深めることができました。
生徒たちにとって、白楊高校の皆さんと過ごした数時間は、一生思い出に残るような濃密でかけがえのない時間でした。
企業の地域活動学習
2日目の最後に向かったのは、宇都宮ライトレール(LRT)の平石駅にあるLRT車両基地です。
宇都宮ライトレール(株)の方にLRTについての講義をしていただきました。講義では、LRTが整備された経緯や現在の利用状況、今後の課題や目標について学びました。その後、実際にLRTに乗車し、車両の構造やデザイン、線路の仕組みについても理解を深めました。さらに、車庫の中に入り、LRTがどのように管理・点検されているのかについても説明を受けました。この学習を通して、宇都宮市がどのようにして「脱・車社会」を目指し、環境に配慮した交通の実現に取り組んでいるのかを知ることができました。
宿泊
この探究型フィールドワークでは、宿泊施設においても「サステナブルな旅」の実現を目指しています。
今回、生徒たちが泊まったのは「ホテルニューイタヤ」。
明治15年創業の歴史あるホテルで、「今までもこれからも、人生に寄り添い、発展を支える、宇都宮最上のおもてなしホテル」のコンセプトのもと、地球環境への配慮として、客室内アメニティの段階的な脱プラスチック化を進めています。
また、連泊時の清掃を必要に応じた対応とし、節水・省エネルギーに努めるなどECOな宿泊を実現しています。
旅の行程
今回、生徒たちはこのような行程で探究型フィールドワークに行きました。
1泊2日の中で、GREEN JOURNEYの5つのコンセプトを実際に体感し、「サステナブルな旅」に必要な要素についての理解を深めることができました。
旅を振り返る
訪問後の事後学習
2日間を通して参加した生徒たちはサステナブル社会を目指す日光・宇都宮市への理解を深めることができたようです。事後学習での生徒たちのコメントを紹介します。
宇都宮での旅行で僕は様々なことを学べました。特に印象に残ったのは、日光に行き、日光東照宮が抱えるオーバーツーリズムの問題などについて学んだことと、白楊高校での体験でVRを使った新しい学習の仕方について学んだことです。こうした体験を通じて、ものごとをより違う視点で見ることができました。日光のオーバーツーリズムの問題については現地に行くことによってより問題の重要性について学べ、また白楊高校の体験で自分の学校では使われていないVRを活用した学習を知り、学び方にはさまざまな方法があることを実感しました。この二日間の体験を活かして、ものごとを違う視点で見ることの大事さについて知りました。
関係者のコメント
今回の探究型フィールドワークに、携わった方々からもそれぞれの視点でコメントをいただいています。
-
- 宇都宮市役所 総合政策部 政策審議室 SSC政策グループ
飯島 智生 様
今回、宇都宮市が目指すまちの姿である、「スーパースマートシティ」について紹介しました。特に講演では、LRT を地域由来の再生可能エネルギー100%で走行させる「ゼロカーボントランスポート」の取組など、脱炭素社会の推進を中心にお話ししました。
学生の皆さんには、講演で得た知識を自分の生活や地域活動で活かしていただき、持続可能な未来に一層貢献していただくことを期待しております。
-
- 一般社団法人 日光市観光協会 日光支部
川田 沙織 様
今回は日光の歴史や文化、そしてインバウンド観光の現状を皆さんと共有でき、とても有意義な時間となりました。観光と環境の関わりについての熱心な質問には、私も刺激を受けました。観光は地域の魅力を伝えるだけでなく、未来を考える学びにもつながります。この経験が皆さんの成長や次の挑戦のきっかけになれば嬉しく思います。
-
- 宇都宮ライトレール株式会社 経営企画課
岩森 隆夫 様
次世代型路面電車(LRT)を基軸とした100年先も持続可能なまちづくり
~地域の再エネ100%で走行する「ゼロカーボントランスポート」の実現~
上記の取り組みを現場に来て、実体験をしてもらい、多くを学ばれたと思います。
学生の皆さんには、未来のまちづくりを考えるきっかけになれば嬉しく思います。
-
- 栃木県立宇都宮白楊高等学校 流通経済科
科長 髙岩恵美 様
教室内では見られない生徒の主体的で生き生きとした姿に触れ、探究的な学びの意義を深く感じました。自分で考え、仲間と協力して行動する姿は頼もしく、この経験は私自身にとっても授業や指導の在り方について改めて考える良い機会となりました。
-
- 広尾学園小石川中学校・高等学校
教諭 上原 慎也 様
事前学習で地域課題や環境配慮を考え、現地ではLRT乗車や農業体験、地元高校生との交流を通じて、生徒たちは主体的に学びを深めました。特に観光協会訪問や海外出身者へのインタビューでは、積極的に質問、交流するなど、自ら考え行動する姿が多く見られました。高校に向けて、今後の成長や地域社会への関心の広がりに大いに期待しています。
-
- 広尾学園小石川中学校・高等学校
社会科教諭 釣田 美加 様
「そっと持ち上げて捻ってみて」と、農業科の高校生に声を掛けられ、恐る恐る手を伸ばす中学生・・・。2日間の実体験で、生徒は栃木の大地の強さと人の温もりを体感できたようです。ネットでの事前学習より、はるかに深く地域を理解し、問題を共有できるようになりました。なかでも実践的な授業に参加し、将来の夢を語り合った白楊高校との交流は、今後も相互にエールを送りつつ、いつの日か地域の未来に大きな花を咲かせることを願っています。
今後に向けて
ピーク期における交通渋滞問題に向き合う日光市と、脱・車社会を掲げる宇都宮市。ともにサステナビリティに向き合う地域の現地に足を運んだからこそ、地域の人々の環境に対する想いに触れることができました。参加した生徒たちも多くの学びを持ち帰ることができたようです。GREEN JOURNEY for SCHOOLは今後も、将来に向けて解決していくべき社会や地域の課題を、次世代の若者たちと体験を通して学ぶ機会をつくっていきます。
白楊高校の皆さんにお話をうかがい、同世代が地域の未来について真剣に考え、地域資源をどう活かすかを議論している姿に刺激を受けました。特に、梨の栽培体験では、農作業の手順をVR体験も含めて詳しく教えていただき、名産品の価値が地域社会と深く結びついていると実感しました。また、彼女たちのプレゼンテーションからは、自分たちのまちを誇りに思い、データや体験を踏まえて課題に向き合う姿勢が伝わり、地域を変える原動力は若い世代の熱意にあると感じました。これらの体験を通して、栃木の魅力は名産品や景観だけではなく、それを支える人々の努力と知恵にあると気づきました。同時に、地域の発展には外部からの関心と内部からの主体的な取り組みの両方が不可欠であることも感じました。今回得た学びを、自分自身の行動や将来の選択に活かし、地域社会にどう貢献できるかを考え続けたいと思います。